2011年11月01日
経営者のための年末調整 第3回 「年末調整で誤りが多い事例(1)」
第3回 「 年末調整で誤りが多い事例(1) 」
第3回と第4回では、年末調整で誤りが多い事例を紹介します。まず今回は、年末調整で受けられる所得控除についての注意点を取り上げます。
1.海外在住の親族も扶養の対象
扶養親族とは、「生計を一にする親族で、合計所得金額が38万円以下の人」のことを指します。ここでの「生計を一にする」とは、「同居している」という意味ではありません。例えば大学生で一人暮らしをしている子どもに仕送りしている場合や、同居をしていない両親に生活費を援助している場合も、所得金額が38万円以下であれば扶養親族になります。
また扶養親族には「国内に住んでいる」という要件もありません。例えば海外に両親や兄弟姉妹が住んでいる場合や子どもが留学している場合には、これらの方への仕送りの事実があれば、扶養親族とすることができます。
年末調整の際に従業員から、海外に住んでいる扶養親族がいると申告があったときには、その扶養親族への仕送りの事実があるかどうか、必ず確認をしてください。
2.配偶者控除と扶養控除は、所得を確認しましょう。
配偶者控除や扶養控除を受ける場合には、もう一つ注意しなければいけません。それは、控除の対象となっている配偶者や親族の合計所得金額が38万円以下であるかについて、確認をする必要があることです。
合計所得金額が38万円以下といってもわかりにくいかも知れませんが、一般的には年間の給与収入が103万円以下と言われています。なぜなら給与収入には、年間の収入金額から最低65万円を控除する給与所得控除という制度があるからです。例えば給与収入が103万円の場合には、65万円を控除した38万円が合計所得金額となります。
この所得要件については、パートやアルバイトで2ヵ所以上の会社に働いている方は、特に注意が必要です。中には、それぞれの会社で給与収入が103万円を超えなければ大丈夫だと思っている方もいるようですが、もちろんすべての会社から支払われた給与の合計で判定します。
もし、控除の対象者の所得をきちんと確認しないまま、年末調整で配偶者控除や扶養控除を行った場合、対象者の合計所得金額が38万円を超えていると、8月頃に税務署から「扶養控除等の控除誤りの是正について」という通知が届きます。そうなると年末調整を再度やり直すことになりますので、必ず事前に対象者の所得を確認するようにしましょう。
3.寡婦控除の申告漏れに注意
最近は、離婚をされて一人でお子さんを育てられている方も、多く見受けられます。このような方は、一定の要件を満たせば「寡婦控除」を受けることができます。なお、男性の場合は、「寡夫控除」といいます。
「寡婦」や「寡夫」とは、次のいずれかに該当する人をいいます。
【寡婦の要件】
●夫と死別や離婚した人、または夫の生死が不明な人で、扶養親族や同一生計の子どもがある人
●夫と死別した人、または夫の生死が不明な人で、合計所得金額が500万円以下の人
【寡夫の要件】
●妻と死別や離婚した人、または妻の生死が不明な人で、同一生計の子どもがあり、なおかつ合計所得金額が500万円以下の人
「扶養控除申告書」には、寡婦控除の対象者である旨を記載する欄があるのですが、ほとんどの方は記載をされていません。寡婦控除を忘れると、支払う必要がない税金を負担させることになりますので、必ず確認をしてください。
税理士 加藤 裕二 著
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次回は「年末調整で誤りが多い事例(2)」についてです。
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