2011年11月01日

経営者のための年末調整             第2回 「年末調整の手続き」

第2回 「 年末調整の手続き 」

1.年末調整の事務手順
 年末調整は、まず従業員一人ひとりから「扶養控除申告書」を提出してもらいます。
年末調整で各種の控除を受けたいと考えている従業員からは「配偶者特別控除申告書・保険料控除申告書」と「住宅借入金等特別控除申告書」も併せて提出してもらいます。

 次に「源泉徴収簿」に、支払った給与や賞与の金額と、社会保険料として控除した金額や源泉徴収した税額を記載し、それぞれ1年間の金額を集計します。
そして、提出された書類を基に各種の控除を行い、課税される給与所得の金額を求め、この金額に一定の税率を乗じた金額が年税額となります。

年税額=課税給与所得金額(※)×税率
(※)課税給与所得金額=給与所得金額−各種所得控除額
   
住宅ローン控除を受ける場合は、課税される給与所得の金額に税率を乗じて求めた金額から、住宅ローン控除額を差し引いて年税額を求めます。

 最後に、すでに源泉徴収された税額と計算された年税額とを比べて、すでに源泉徴収された税額が年税額よりも多ければ、その金額を還付し、源泉徴収された税額が年税額よりも少なければ、不足額を徴収します。


2.年末調整は還付とは限らない
 年末調整は、あくまでも過不足額の精算なので、還付になって手取りが増えることもあれば、徴収になって手取りが減ることもあります。
徴収になるケースとしては、
●扶養親族の人数が減った場合
●給与や賞与の金額が大幅に増加した場合
が考えられます。

【扶養親族の人数が減った場合】
 毎月の給与や賞与について源泉徴収される税額は、支払われる給与の金額扶養親族の人数によって決まります。なぜなら年末調整によって、できるだけ過不足額が出ないようにするためです。そのため、年の途中で扶養親族の人数が減った場合には、年末調整で徴収になります。
 ただし、扶養親族が年の途中で亡くなったとしても、扶養親族の人数が減ったことにはなりません。扶養親族が減るケースとしては、扶養親族としていた人の1年間の所得が一定の金額を超えたため、扶養親族に該当しなくなった場合や、配偶者と離婚して扶養親族でなくなった場合が考えられます。

【給与や賞与の金額が大幅に増加した場合】
 支払われる給与の金額と扶養親族の人数から、おおよその所得金額を求めることができます。この所得金額に税率を乗じて12等分した金額を源泉徴収することで、できるだけ年末調整で過不足額が出ないようになっています。
 給与に対する年税額の計算では、所得金額に応じて税率が5%から33%まで5段階に分けられています。そのため、年の途中で給与の金額が大きく増えた場合には、所得金額も増加し、それに伴って税率も上がることがあります。給与の金額が増える前は、源泉徴収された税額は低い税率で計算されています。
結果的に源泉徴収された税額が、年税額に足りないことになってしまい、年末調整ではその不足額が徴収されることになります。

税理士 加藤 裕二 著


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次回は「年末調整で誤りが多い事例(1)」についてです。
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